1号認定とは？2号との違い・賢い使い方を専門家が解説

そもそも保育園の「1号認定」とは？制度の基本を3分でおさらい

さて、ここから本題です。子ども・子育て支援新制度を理解する上で避けては通れない「認定区分」。なぜこのような複雑な区分が必要なのでしょうか？それは、多様化する家庭のニーズに、国がきめ細かく応えようとした結果に他なりません。このセクションでは、1号認定が制度全体の中でどのような位置づけにあり、誰のための制度なのか、その核心を徹底的に、かつ分かりやすく解説します。1号認定の正式名称から対象年齢、そして2号・3号認定との決定的な違いまで、まずは制度の基本地図を頭に入れましょう。

「1号認定」とは「教育標準時間認定」のことです

あなたがこれから使いこなすことになる「1号認定」とは、子ども・子育て支援新制度が定める3つの認定区分のうちのひとつであり、その正式名称を「教育標準時間認定」と呼びます。この認定は、お子さまが満3歳以上であり、幼稚園や認定こども園といった施設で「教育」を受けるために、お住まいの自治体から交付される「資格証明書」のようなものだと考えてください。

この制度の根底にあるのは、「すべての子どもに質の高い幼児教育の機会を保障する」という国の強い意志です。そのため、保護者が働いているか、専業主婦（夫）であるかといった就労状況は一切関係ありません。教育を主目的として施設を利用したいと願う、すべての家庭がその対象となります。

少し難しく聞こえるかもしれませんが、要はこれまで各幼稚園が独自に行ってきた入園プロセスを、国が定めた統一ルール（子ども・子育て支援新制度）の中に明確に位置づけたのが1号認定なのです。「保育」を主目的とする2号・3号認定とは、この出発点からして根本的に思想が異なることを、まずはしっかりとご理解ください。

対象となる子どもの年齢は「満3歳以上」です

1号認定の資格を得るための明確な条件、それはお子さまの年齢が「満3歳以上」であることです。より具体的に言えば、幼稚園や認定こども園（教育利用枠）への入園を希望する、満3歳から小学校就学前の5歳までのお子さまが対象となります。あなたのお子さまがこの年齢範囲にいるならば、1号認定は最も重要な選択肢のひとつとなるでしょう。

ここで一つ、非常に重要な注意点があります。それは、0歳から2歳のお子さまは、1号認定の対象にはならないということです。この年齢のお子さまを施設に預けたい場合は、保護者の就労などを証明して「保育の必要性」を認められ、「3号認定」を申請する必要が出てきます。この年齢による厳格な区分けは、しばしば保護者の混乱を招くポイントです。

読者の皆さまが抱くかもしれない「なぜ2歳ではダメなの？」という疑問への答えは、制度が「3歳」を、子どもが集団での『教育』を始める適切な年齢と定めているからに他なりません。お子さまの生年月日と照らし合わせ、どの認定区分の対象となるのかを最初に確定させることが、迷いのない施設選びへの最短ルートです。

2号・3号認定との最大の違いは「保育を必要とする事由」の有無です

さて、1号認定と、2号・3号認定を分ける最も決定的で、かつ本質的な違いは何か。それは、あなたの家庭に「保育を必要とする事由」があるかどうか、その一点に尽きます。2号認定（満3歳以上で保育を利用）や3号認定（満3歳未満で保育を利用）を受けるためには、保護者の就労（例：月64時間以上など）、妊娠・出産、親族の介護といった、自治体が「家庭での保育が困難である」と客観的に判断する理由が絶対に必要です。

それに対して、1号認定は「教育」を受けるための認定です。そのため、このような「保育を必要とする事由」は一切問われません。これは何を意味するでしょうか？そう、あなたが専業主婦（夫）であっても、フリーランスで就労時間が不規則であっても、あるいは特に理由はなくても、「子どもに質の高い教育を受けさせたい」という純粋な願いさえあれば、誰でも申請する権利があるということです。

この根本的な違いこそが、利用できる施設の種類、1日の利用時間、そして申し込み手続きのプロセスといった、あらゆる違いの根源となっています。ご自身の家庭状況がどの認定区分に最も適合するのか、そしてどの認定を選ぶのが戦略的に有利なのか。それを正しく見極めることが、あなたの「保活」を成功に導く絶対的な鍵となるのです。

【図解】ひと目でわかる！1号・2号・3号認定の違い比較表

ここまで言葉で解説してきましたが、複雑な制度は一枚の図にまとめることで、その全体像が一瞬で頭に入ってきます。ここでは、本記事の最重要ポイントである1号・2号・3号認定の核心的な違いを、比較表としてビジュアル化しました。この表は、あなたの思考を整理し、今後の判断を助ける強力なツールとなるはずです。

比較の軸は「対象年齢」「保育の必要性の有無」「利用できる主な施設」「1日の利用時間」という、最も重要な4つの視点です。これらを横断的に見ることで、例えば「うちは子どもが3歳で、私はパート勤務。この場合は1号と2号、両方の可能性があるな」といった具体的な自己分析が可能になります。

多くの情報に惑わされそうになった時は、いつでもこの表に立ち返ってください。あなたが進むべき道筋を、明確に照らし出してくれる羅針盤となるでしょう。今後の施設選びの全プロセスにおいて、この比較表をぜひ傍らに置いてご活用ください。

1号認定はどこで使える？幼稚園・認定こども園・保育園との関係

前のセクションで1号認定の正体は掴めましたね。では次にあなたが抱く当然の疑問、「で、その1号認定は具体的にどこで使えるの？」にお答えしましょう。「保育園の1号認定」という言葉の響きから、当然保育園で使えるものと思っている方も少なくありませんが、ここには大きな落とし穴があります。このセクションでは、なぜ保育園では利用できないのかという根源的な理由から、利用の主戦場となる「幼稚園」と「認定こども園」それぞれの特徴、そして1号認定で認定こども園を選ぶことの戦略的メリットまで、深く掘り下げていきます。

主な利用施設は「幼稚園」と「認定こども園」です

結論から申し上げましょう。あなたが取得した1号認定という「資格」を行使できる場所、それは原則として「幼稚園」と「認定こども園」の2種類の施設に限られます。なぜなら、これらの施設は学校教育法に準拠し、子どもたちに「教育」を提供することを第一の使命としており、1号認定の「教育標準時間認定」という趣旨と完全に合致するからです。

「幼稚園」は、あなたもご存知の通り、伝統的に満3歳からの子どもたちに教育を提供してきた施設です。その歴史と教育内容の蓄積は、大きな魅力と言えるでしょう。一方で、「認定こども園」は、その幼稚園が持つ「教育機能」と、保育園が持つ「保育機能」を一つの施設でハイブリッドに提供する、比較的新しい形態の施設です。ここでは1号認定の子も、2号・3号認定の子も同じ園舎で生活します。

では、どちらの施設があなたの家庭にとって最適なのでしょうか。その答えは、あなたが教育に何を求めるか、そしてどのようなライフスタイルを送りたいかによって変わってきます。教育カリキュラムの特色、園庭の広さや雰囲気、そして後述する「預かり保育」の充実度など、複数の視点から徹底的に比較検討することが、お子さまにとって最高の環境を選ぶための絶対条件です。

なぜ「保育園」では1号認定を利用できないのか？

ここで、多くの方が「え、そうなの？」と驚かれる、しかし極めて重要な事実をお伝えします。それは、「保育園」では原則として1号認定は利用できない、ということです。この理由は、保育園と幼稚園（および認定こども園の教育部分）が、準拠する法律と、国から与えられた社会的役割が根本的に異なる点にあります。保育園は、児童福祉法という法律に基づく「児童福祉施設」であり、その最優先の目的は、保護者の就労や疾病などにより「家庭での保育に欠ける」子どもたちを預かり、心身を健やかに育む「養護」にあるのです。

つまり、保育園はあくまで「保育を必要とする家庭」を社会的に支援するためのセーフティネットとしての役割を担っています。そのため、入園資格は2号認定または3号認定を持つ子どもに限定され、「保育の必要性」が問われない1号認定の子どもは、その対象とならないのです。読者の中には「でも、近所の保育園は…」と思われる方もいるかもしれませんが、それは多くの場合、その施設が「認定こども園」へ移行しているケースです。

この「教育の幼稚園・認定こども園」と「保育の保育園」という明確な役割分担を理解することは、あなたが施設探しで無駄な時間を使わないために、絶対に不可欠な知識と言えるでしょう。

認定こども園とは？1号認定で利用するメリットを解説

1号認定を検討する上で、あなたの選択肢を劇的に豊かにしてくれるのが、近年急増している「認定こども園」の存在です。認定こども園は、先述の通り幼稚園と保育園の機能を併せ持つ施設ですが、これを1号認定で利用することには、計り知れない戦略的メリットが隠されています。最大のメリットは、あなたのライフプランの変更に対する圧倒的な「柔軟性」です。

具体例を挙げましょう。あなたが今、専業主婦で子どもを1号認定で入園させたとします。しかし1年後、フルタイムの仕事に復帰することを決意しました。従来の幼稚園であれば、保育時間の問題で退園し、新たに2号認定で入れる保育園を探す「保活」をゼロから始めなければなりませんでした。しかし、認定こども園ならば、園の定員に空きさえあれば、自治体への申請で「1号」から「2号」へ認定を切り替え、子どもは通い慣れた園を辞めることなく、そのまま保育時間を延長して通い続けられるのです。

このメリットは、子どもにとっては環境の変化というストレスから守られ、あなたにとっては「保活」の労力から解放されるという、計り知れない価値を持ちます。さらに、多様な背景を持つ家庭の子どもたちが共に育つ環境は、子どもの社会性を育む上でも大きな利点となり得ます。認定こども園という選択肢は、現代の予測不可能な時代を生きる私たち家族にとって、最強の保険とも言えるでしょう。

【家計診断】パート収入で徹底比較！「1号認定＋預かり保育」vs「2号認定」損得の分岐点はどこ？

制度の仕組みを理解したところで、いよいよ本記事の核心であり、あなたが最も知りたいであろうテーマに切り込みます。それは、「結局、我が家の家計にとってはどちらが一番得なの？」という、極めて現実的なお金の問題です。多くのウェブサイトがこの問いに明確な答えを与えてくれませんが、私たちは断言します。答えは、あなたの「働き方」と「預かり保育の利用料」を計算することで、明確に導き出せます。ここでは具体的なモデルケースを用いて、家計の損得の分岐点を白日の下に晒します。

費用算出の基本：幼児教育・保育の無償化の上限（月額25,700円）と実費負担

まず、あなたの家計負担を計算する大前提として、「幼児教育・保育の無償化」制度を120%理解する必要があります。この制度により、満3歳から5歳までの子どもたちの幼稚園、保育所、認定こども園などの「利用料（保育料）」が、月額25,700円を上限として無償化されます。これは1号認定でも2号認定でも共通の、非常に強力な家計支援策です。

しかし、あなたが絶対に知っておかなければならないのは、無償化されるのはあくまで「利用料」のみ、という事実です。具体的には、①通園送迎バスの費用、②給食費（食材料費）、③制服や教材などの購入費、④PTA会費や行事への参加費などは、原則としてすべて自己負担となります。特に月々の負担として大きい給食費は、1号・2号を問わず保護者負担となることを忘れてはいけません。

そして、ここからが最重要ポイントです。1号認定で幼稚園などを利用し、正規の教育時間（概ね4時間程度）を超えて子どもを預ける「預かり保育」。この利用料も、あなたの家庭に「保育の必要性」が認められれば、月額11,300円を上限として無償化の対象となるのです。この「預かり保育料」と「無償化の上限額」の関係こそが、家計の損得の分岐点を決定づける最大の鍵となります。

【FP監修・比較表】月収5万円〜10万円モデルケース別・家計負担シミュレーション

では、理論はここまでにして、最もリアルなシミュレーションを見ていきましょう。ここでは、ファイナンシャルプランナー（FP）監修のもと、多くの家庭に当てはまるであろう「パート月収8万円（週3日・1日5時間勤務）」という具体的なモデルで、年間の家計負担額を徹底的に比較分析します。あなたの状況をここに当てはめて考えてみてください。

このシミュレーションが示す通り、安易に「パートだから1号」と決めつけるのは危険です。あなたの目標とする収入と、それに伴う預かり保育の利用時間を正確に算出し、無償化の上限を超えるか否かを見極めること。それこそが、情報強者になるための第一歩なのです。さらに、自治体によっては独自の補助金制度が存在する場合もあり、それを活用すれば分岐点はさらに変化します。

2号認定から1号認定への切り替えは可能？働き方が変わった場合の手続き

人生には変化がつきものです。あなたが今、フルタイムで働いていてお子さまを2号認定で預けているとしても、数年後に退職して専業主婦（夫）になる、あるいは働き方をパートタイムに変える可能性はゼロではありません。その時、「保育を必要とする事由」を失った場合、原則として2号認定の資格も失い、お子さまは退園を求められることになります。これは、多くの家庭にとって悪夢のようなシナリオでしょう。

しかし、もしあなたのお子さまが「認定こども園」に通っていたなら、この悪夢は回避できます。園の1号認定クラスに空きがあれば、あなたは自治体で認定区分を「2号→1号」へと変更する手続きを行うだけで、お子さまは慣れ親しんだ園、大好きなお友達や先生と離れることなく、そのまま通い続けることができるのです。これは、子どもの心理的負担を考えれば、何物にも代えがたい絶大なメリットです。

手続きは、まず在園している認定こども園に認定変更の希望を伝え、1号認定の受け入れ枠があるかを確認することから始まります。園から了承を得た上で、お住まいの自治体の担当窓口（子育て支援課など）で、支給認定変更申請書を提出します。あなたのライフプランに少しでも不確定要素があるのなら、この「認定変更の柔軟性」という観点を、最初の園選びの段階で最重要項目の一つとして組み込むことを、私たちは強く推奨します。

【落とし穴】知らないと損！「満3歳の誕生日」からすぐ使える？1号認定の“年齢の壁”と賢い利用開始時期

「子どもの3歳の誕生日に、素敵な園の制服を着せてあげたい」。そう願うあなたは、極めて重要な「年齢の壁」というルールの前に、その計画が脆くも崩れ去る可能性を知っておくべきです。多くの保護者がつまずき、後悔するこの「利用開始タイミング」の落とし穴。このセクションでは、なぜ誕生日即入園が原則できないのかという根本ルールから、その例外となる「満3歳児入園」という裏技、そして入園までの空白期間を黄金の時間に変える戦略まで、あなたの入園計画を完璧なものにするための知識を授けます。

原則は「年度始まり（4月1日）」時点での年齢

まず、あなたが絶対に理解しておかなければならない大原則。それは、日本の多くの幼稚園や認定こども園が、学校と同じ「年度（4月1日〜翌年3月31日）」という時間軸で運営されているという事実です。クラス編成、年間カリキュラム、行事計画のすべてがこの年度を基準に組まれているため、1号認定での正規入園も、原則として年度がスタートする「4月1日時点」でのお子さまの年齢に基づいて判断されます。

具体例で考えてみましょう。あなたのお子さまが5月生まれだとします。5月の誕生日に満3歳になりますが、その年度のスタートである4月1日時点ではまだ2歳です。そのため、原則ルールに則れば、誕生日を迎えてもすぐには入園できず、翌年の4月を待って「3歳児クラス（年少）」として入園することになります。これが、多くの保護者が直面する「タイムラグ」の正体です。

この原則を知らないまま、「3歳になったらすぐに入れるはず」と周囲に話したり、あなたの仕事復帰の計画を立ててしまうと、後で大きな修正を迫られることになります。特にお子さまが4月や5月生まれの場合、満3歳になってから次の4月まで、最大で1年近くの待ち時間が発生する可能性があることを、必ず念頭に置いておきましょう。

「満3歳児入園」を実施している園の見つけ方

原則ルールの存在に、少しがっかりしてしまったかもしれませんね。しかし、諦めるのはまだ早いです。ここからが情報強者になるための知識です。園によっては、この原則の例外として、満3歳の誕生日を迎えたお子さまを、年度の途中からでも柔軟に受け入れる「満3歳児入園」という制度を設けている場合があります。これは、早くから集団生活を経験させたいと願うあなたにとって、まさに救世主となりうる選択肢です。

この「満3歳児入園」では、子どもたちは一つ上の学年である年少クラスに混ざって生活したり、あるいは専用の少人数クラスが設けられたりします。どちらの形態であれ、子どもの発達段階に合わせた丁寧な配慮がなされるのが一般的です。では、どうすればこの貴重な制度を持つ園を見つけられるのでしょうか？

最も効率的な方法は、お住まいの自治体のウェブサイトに掲載されている「幼稚園・認定こども園一覧」のPDFやページを徹底的に読み込むことです。募集要項の中に「満3歳児募集」「2歳児クラス（プレ保育）からの編入あり」といった記述があれば、それが有力な候補です。情報が古かったり、不十分だったりすることも多いため、最終的にはリストアップした園の公式サイトを直接確認し、電話で「満3歳になった〇月から入園することは可能ですか？」と単刀直入に問い合わせるのが最も確実な方法です。

誕生日を迎えてから入園するまでの過ごし方と選択肢

あなたのリサーチの結果、残念ながら希望する園が「満3歳児入園」を実施しておらず、次の4月まで待たなければならない、と判明したとします。この入園までの空白期間を、あなたならどう過ごしますか？「ただ家で待つしかない」と考えるのは、非常にもったいないことです。この期間は、お子さまが入園後の集団生活にスムーズに適応するための、極めて重要な「助走期間」と位置づけることができます。

最も有効な戦略は、多くの園が週に1〜2回程度実施している「プレ保育」や「未就園児クラス」に親子で参加することです。これは、入園を検討している親子が、手遊びや簡単な製作活動を通じて、園の生活や雰囲気に慣れるためのプログラムです。お子さまにとっては園という場所が「楽しい場所」であるとインプットされ、あなたにとっては先生方の質や他の保護者の雰囲気を肌で感じる絶好の機会となります。ここで良好な関係を築いておくことが、入園後の安心感に直結します。

それと並行して、地域の児童館や子育て支援センターが主催するイベントに積極的に顔を出したり、興味のある習い事を試してみるのも良いでしょう。重要なのは、親子だけの閉じた世界に留まるのではなく、同年代の子どもや他の大人と触れ合う機会を意識的に創出することです。この戦略的な「助走期間」の過ごし方こそが、お子さまの豊かな園生活のスタートを約束するのです。

【体験談】先輩ママに聞く！1号認定のリアルな日常と「メリット・デメリット」の本音

さて、あなたはここまでで制度や数字について、他の誰よりも詳しくなりました。しかし、私たちの生活はデータだけで成り立ってはいません。そこでこのセクションでは、実際に1号認定を利用して子育てに奮闘する先輩保護者の、加工されていない「生の声」をお届けします。語られる輝かしいメリットの裏に潜む意外なデメリット、そして理想と現実のギャップ。これらの本音に耳を傾けることで、あなたは1号認定という選択が、ご自身の家庭の日常にどのような変化をもたらすのかを、解像度高くイメージできるようになるでしょう。

メリット：「教育内容が充実」「親子の時間が増えた」という声

1号認定を利用して本当に良かった、と多くの先輩保護者が口を揃える最大の理由は、やはり「教育の質と内容の充実」です。教育を第一の目的とする幼稚園や認定こども園では、日々の保育時間の中に、文字や数の学習、あるいは専門講師による英語、体操、音楽といった特色ある教育プログラムが体系的に組み込まれていることが多く、家庭だけでは決して与えられない豊かな経験を子どもに提供できます。

この「親子時間の確保のしやすさ」も、1号認定の大きな魅力です。保育時間が比較的短い分、降園後に習い事に通ったり、図書館で本を借りたり、あるいは家で一緒に料理をしたりと、園以外の時間を主体的に計画しやすいのです。子どもとの密なコミュニケーションを何よりも大切にしたい、と考えるあなたにとって、この点は非常に大きな価値を持つはずです。

デメリット：「預かり保育の予約が大変」「行事や親の出番が多い」という声

しかし、物事には必ず光と影があります。1号認定のメリットは、視点を変えればそのままデメリットになり得ます。特に多くの保護者が「こんなはずではなかった」と直面するのが、「預かり保育の使い勝手」と「親の参加負担」という二つの壁です。働く親の助けとなるはずの預かり保育ですが、その運用は園によってまさに千差万別。定員が極端に少なかったり、利用には前日までの完全予約が必要だったり、夏休みなどの長期休暇期間は実施していなかったり、というケースは決して珍しくありません。

特に、歴史の長い私立幼稚園などでは、伝統的に「園の運営は保護者と共に」という文化が根強く残っている場合があります。役員活動への参加が半ば強制的であったり、園の清掃活動への参加が求められたりすることも。こうした「見えない負担」が、特に時間に制約のあるあなたにとっては大きなストレスになり得ます。入園を決める前に、預かり保育の予約システムや長期休暇中の対応、そして保護者参加行事の年間スケジュールと頻度について、納得がいくまで具体的に確認しておくことが、後悔を避けるための絶対的な鉄則です。

【コラム】私が1号認定を選んで「良かったこと」「後悔したこと」

制度の一般論だけでは、なかなか自分ごととして捉えきれないもの。そこで、よりパーソナルな視点から、フリーランスのデザイナーとして在宅で働きながら、お子さまを1号認定で認定こども園に通わせた、あるお母さんのリアルな体験談をご紹介します。彼女の選択の裏にあった葛藤と、そこから得られた教訓は、きっとあなたの心に響くはずです。

1号認定の申し込みから入園までの完全ロードマップ

あなたの心の中で、利用したい園のイメージが固まってきた頃でしょうか。では、いよいよ最終フェーズ、具体的な「行動」へと駒を進めましょう。このセクションでは、申し込みから入園までの一連のプロセスを、誰にでも分かる「完全ロードマップ」として提示します。自治体の窓口で利用調整が行われる2号・3号認定とは、手続きの進め方が全く異なります。この4つのステップをしっかりと頭に叩き込み、ライバルに差をつけ、スムーズかつ確実に入園を勝ち取りましょう。

【フローチャート】STEP1：園の見学と情報収集

すべての戦略は、質の高い情報収集から始まります。あなたの最初のミッションは、通園可能な範囲にある幼稚園や認定こども園をすべてリストアップし、それぞれの「個性」と「事実」を徹底的にリサーチすることです。自治体のウェブサイトや子育て支援サイトは出発点に過ぎません。最終的な勝敗を決するのは、あなた自身の足と目、そして耳で集めた一次情報です。

気になる園が見つかったら、ただ見学するだけでは三流です。一流のあなたは、事前にその園の教育方針を読み込み、聞くべき質問をリストアップして臨みます。「1号認定の募集予定人数は何名ですか？」「昨年度の預かり保育の予約は、どの程度取りやすかったですか？」「長期休暇中の預かり保育では給食は出ますか？」「保護者が参加する行事は、具体的に年間何回、何曜日に開催されますか？」――こうした具体的な質問が、あなたを後悔から守ります。

そして、最も重要なのは、そこで働く先生方の子どもたちへの眼差し、園舎の清潔さ、そして通っている子どもたちの表情です。データには決して表れない「空気感」が、あなたの家庭と本当に合っているか。その直感を信じることも、論理的なデータ収集と同じくらい重要なのです。

STEP2：園への直接申し込みと面接

情報収集と分析を終え、あなたが「この園だ！」と確信できる園を見つけたら、次はいよいよ「出願」という戦いの舞台に上がります。ここで、1号認定の申し込みプロセスにおける最大の特徴を、改めて強調します。それは、自治体の窓口ではなく、希望する園に直接申し込みを行う、という点です。これは、自治体が一括で調整を行う2号・3号認定とは、ゲームのルールが全く異なります。

募集スケジュールは園が独自に定めており、一般的には入園前年の秋、9月から11月にかけて願書の配布・受付が行われます。超人気の園にもなると、願書配布日の早朝から保護者が列をなす、という光景も珍しくありません。あなたが本命とする園のスケジュールは、夏頃から常に公式サイトで監視し、絶対に乗り遅れることのないようにしなければなりません。

願書提出後には、多くの場合、お子さまと保護者を対象とした面接や、簡単な行動観察が行われます。これは決して「お受験」のような選抜試験ではありません。園側は、お子さまの基本的な発達状況を確認し、そして何より、あなたの家庭の教育方針が園の理念と大きく乖離していないかを確認したいのです。「なぜ数ある園の中から、本園を志望されたのですか？」という問いに、あなたの言葉で、情熱を持って語れるように準備しておきましょう。

STEP3：園を通じた認定申請と「認定証」の交付

激戦を勝ち抜き、園から「内定」の吉報を受け取ったあなた。しかし、まだ気は抜けません。次なるミッションは、1号認定の資格を正式に得るための「認定申請」です。この手続きは少し複雑に聞こえるかもしれませんが、心配は無用です。基本的には、内定を得た園が手厚くサポートしてくれます。

通常、内定者説明会などの場で、園から「支給認定申請書」という公的な書類が配布されます。あなたは、この書類に氏名、住所、家族構成などの必要事項を正確に記入し、再び園に提出します。園は、あなたの申請書をとりまとめ、代理としてお住まいの自治体の担当窓口に提出してくれる、という流れが一般的です。

申請書を受け取った自治体は、あなたのお子さまが満3歳以上であることなどを確認し、1号認定の要件を満たしていると判断すれば、後日、あなたの自宅に「支給認定証」という証明書を郵送してきます。この一枚の紙こそ、あなたがお子さまの幼児教育・保育の無償化という権利を行使するために不可欠な、勝利の証なのです。

STEP4：園との本契約

自治体から「支給認定証」が交付され、あなたが1号認定の資格を持つことが公的に証明されたら、いよいよ栄光のゴールテープは目の前です。最後のステップは、入園する園との間で、正式な「入園契約」を交わすことです。この直接契約という形式こそ、園というサービス提供者と、あなたという利用者が、対等な立場で合意を結ぶ、1号認定ならではの仕組みの象徴です。

園が指定する期日までに、入園金や、制服・体操服・教材などの費用を納入します。同時に、アレルギーに関する調査票や、緊急連絡先を記入する書類など、園生活を始めるにあたって必要な各種書類を提出します。これらの手続きがすべて完了した瞬間、あなたの長きにわたる戦いは終わりを告げ、輝かしい園生活への扉が開かれます。

あとは、入園説明会で指示された手提げバッグや上履き袋などを、お子さまの好きな柄で作ってあげたり、早寝早起きの生活リズムを整えたりしながら、親子で期待に胸を膨らませて4月の入園式を待つだけです。本当にお疲れ様でした。

【自治体でこんなに違う！】あなたの街は？預かり保育の料金・申込方法「ローカルルール」徹底調査

あなたが1号認定を戦略的に使いこなし、仕事と育児を両立させる上で、その成否を分ける最大の変数が何かご存知ですか？それは「預かり保育」の使い勝手です。そして、その料金、補助金、利用条件は、国が一律に決めているわけではなく、あなたが住む自治体の方針によって天と地ほどの差があるという衝撃の事実。この自治体ごとの「ローカルルール」の存在を知らずして、園選びをすることは、羅針盤を持たずに航海に出るようなものです。このセクションでは、なぜこの違いが生まれるのか、そしてあなたの街のルールを暴き出すための調査術を伝授します。

なぜ料金やルールが自治体によって違うのか？

「同じ日本の制度なのに、なぜ住む場所でこんなに違うの？」――その当然の疑問にお答えします。預かり保育の運用に絶大な地域差が生まれる理由は、制度の財源構造と、自治体に与えられた「裁量権」にあります。国の「幼児教育・保育の無償化」制度は、あくまで全国共通の最低保障ライン（ナショナル・ミニマム）に過ぎません。

例えば、税収が豊かで、子育て支援に力を入れている自治体（例えば、東京都の一部の区など）は、国の補助金（月額最大11,300円）に、さらに独自の補助金を上乗せし、保護者負担を限りなくゼロに近づける政策をとっている場合があります。一方で、財政が厳しい自治体や、待機児童問題がより深刻な2号・3号認定の保育枠確保を優先する自治体では、補助は国の基準通り、ということも少なくありません。

さらに、園の設置主体（伝統を重んじる私立か、公的な性格の強い公立か）や、園長先生の教育方針によっても、預かり保育の実施時間、長期休暇中の対応、利用料金、予約の取りやすさは全く異なります。これらの複雑な要因がモザイクのように組み合わさり、結果として、あなたが川を一つ越えて隣の市に引っ越しただけで、利用条件が劇的に変わるという「ローカルルール」が生まれるのです。

自治体の公式サイトで確認すべき3つのポイント

では、あなたはどうすれば、この混沌としたローカルルールの迷宮から、正確な情報を掴み取ることができるのでしょうか。その答えは、あなたの街の「自治体公式サイト」という名の宝の地図を、徹底的に読み解くことです。子育て支援課や保育課のページにアクセスし、以下の「3つの秘宝」を血眼になって探してください。

これらの情報を入園活動の初期段階で完璧に把握しておくことで、あなたは他のライバルたちよりも圧倒的に優位なポジションから、戦略的に園選びを進めることができるようになります。

事例比較：東京都世田谷区 vs 大阪市 vs 横浜市の預かり保育

最後に、この「ローカルルール」がいかに劇的な差を生むか、具体的な都市を例に挙げて、あなたの脳裏に焼き付けたいと思います。ここでは、待機児童数や子育て政策で常に注目される東京都世田谷区、大阪市、そして横浜市の3都市を比較してみましょう。（※注意：以下の内容は、制度の地域差を理解していただくためのモデルケースです。最新かつ正確な情報は、必ずご自身で各自治体の公式サイトにてご確認ください。）

東京都世田谷区のケース：私立幼稚園に通う子どもが多く、区として独自の「私立幼稚園等保護者補助金」制度が非常に手厚いことで知られています。預かり保育の利用料に対しても、国の補助に上乗せする形で区独自の補助が適用され、保護者の実質負担額が他の都市に比べて著しく低く抑えられる可能性があります。

大阪市のケース：全国的に見ても、私立幼稚園における長時間の預かり保育の実施率が非常に高く、働く保護者にとっては選択肢が豊富なエリアです。多くの園が競ってサービスを充実させているため、夜遅くまでの預かりや、長期休暇中の手厚い対応が期待できる一方で、その分利用料金は園によって幅があり、補助制度を最大限活用した費用比較が不可欠となります。

このように、あなたがどこに住むかによって、子育ての経済的負担や、働き方の自由度は大きく変わってきます。もしあなたが将来的に引っ越しを検討しているならば、その候補地の「子育て支援制度」を、家賃や住環境と同じくらい重要な判断基準として調査することを、強く、強く推奨します。